| 前略 安部 隆様 この前会ってからもう半年になるけど、あいかわらず仕事はハードなのかな?君も来年は40歳なんだから体を大事にしないといけないよ。
ところで『メカノ』って聞いたことあるでしょう?コレ、君が長男の為に求めていたモノだなって思ったから紹介するよ。コレ、プレゼントすると君自身が3倍うれしくなるからね。では、11歳の哲郎君に「メカノ-トレインセット」を買ってあげたと考えてみて欲しい。
哲郎君は本当はパソコンが欲しいんだよね。だから13歳になったらプレゼントすると約束してるんだけど、来年買ってあげようかと君は考えているんだよね。哲郎君は君に似てやや内気な理科系タイプ。でも君が心配してるのは哲郎君はそこそこ勉強ができてしまうので、公式をうのみにして一面的な見方で物事を処理しようとする秀才タイプに育つんじゃないかなってことだよね。「あらゆることに臨機応変に対処できる柔軟な思考力を身につけて欲しいんだけど」っていつも僕に言っていたよね。
これはまさに君自身が今仕事で直面している問題だよね。ソフトハウスのSEはワンパターンな思考では業務をこなせなくなったといつも言っていたね。クライアントの要件定義を行っているとA要件とB要件がジレンマを起こすことがよくある。‥‥さあどうするか?ここで求められるのはロジックじゃない。ブレイクスルーできなくて君とスタッフは脳に汗をかいて苦しむことがある。そしていつも思うのは結局クリエイティブなセンスが絶対に必要なんだって言うよね。
だから父親として哲郎君に与えたい最大のプレゼントはクリエイティブなセンスなんだということは君は骨身に染みて思っている。では例えば絵を描けばいいのか?音楽をやればいいのか?‥でもなんか違うような気がするって思うんだよね。必要なのはアート的なセンスじゃなくて、柔軟な創造性なのだから。だから彼にパソコンを買ってあげる前にメカノをプレゼントすればいいよと僕は薦めるのだ。
哲郎君は『メカノ』を見ても「うわー」とは喜ばないかも知れないね。でも根がエンジニアタイプだからそのうち組み立て出すだろう。もともと集中力はある子だから、やりだせば没頭する。『メカノ』ってだれでも没頭しやすいようにできてるんだよ。だから幸福な時間を過ごす経験をすることになる。そして組みあがれば「ものすごく嬉しい!」ものなんだ。これを見て君も「ものすごく嬉しくなる!」んだ。
まだあるよ。この組んでゆく過程で哲郎君はクリエイティブな面白さを覚えるはずだ。単純なパーツを組み合わせてこんな複雑なメカが組み上がることを経験する。メカノは組み方がいく通りもある。トレインセットの場合は8モデルだから、このパーツを使って他に7つものモデルがあることを理解した時、物事の処理の仕方は1つじゃないっていうことを自然に学ぶ。だから思考が柔軟になるんだよ。そうすると君は哲郎君が成長していくことを見てまた「嬉しくなる!!」これで2倍嬉しい!
そして、組み上がったトレインセットはインテリアとして飾る。手作業のメカノは実は極わずかな傷があったり、微妙に歪んでいたりする。心理学的にはメカノを見る人が意識していない深い部分で手作業の歪みを認識していて、微妙な味と感じるのだそうだ。レトロな味とあいまって完成したメカノは人を惹きつける素晴らしい吸引力を持っている。実に個性的なインテリアになるから奥さんが喜ぶ。すると君も「嬉しい!!」これで3倍嬉しい!
さらにあるよ。君の親父は今だにアナログのゼンマイ自動巻きの時計をしてるぐらいのレトロ好きだったよね。哲郎君が組替えに飽きたらこんどはお父さんにプレゼントすればいい。孫の手作りでしかもレトロな『メカノ』だからこれまたむちゃくちゃ喜ぶ。すると君も「嬉しい!!」これで4倍嬉しい!(おまけだよ)
要するに本当にいいものをプレゼントすると、プレゼントした方が嬉しくなるって話だよ。参考になったら嬉しいよ僕も。ではまた今度。
早々
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